世界遺産の山を歩く 山楽部

2012/04/21

心拍停止15分経過で死亡宣告

先月のニュースになりますが、2012年3月15日 山梨日日新聞の記事です。
自分も携わる範疇の事なので取り上げてみました。

登山者処置で県協議会が基準
心拍停止15分経過で死亡宣告
救護者の安全守り負担軽減

山梨県内の医療関係者などでつくる県メディカルコントロール協議会(会長・中沢良英県医師会理事)は14日、山岳地で心肺停止となった登山者らの処置についての基準を決めた。医師が15分以上蘇生を試みても心拍が再開しない場合は、継続して処置を行わず死亡宣告するなど、救護者側の安全確保や負担軽減につなげる内容。富士山や南アルプスに限らず、多くの山を抱える山梨県内すべての山の共通基準とする考えで、今後、県警や消防、医療機関などに周知する。

 対応策では、心肺停止時に医師が蘇生を試み、15分経過しても心拍が再開しない場合は死亡宣告をする。医師がいない場合でも
(1)発見時すでに心肺停止状態
(2)心臓マッサージと自動体外式除細動器(AED)を3回行って心拍再開しない
(3)AEDが使えない

-のうち2項目に当てはまり、県立中央病院救命救急センターの医師らの承認を得たときに蘇生中止とした。基準は4月からの適用を目指す。

 同協議会などによると、医師が詰める救護所、診療所があるのは夏山シーズンの富士山と南アルプス・北岳。連絡を受けて現場に駆け付けるが、心肺停止の場合、大半が蘇生しても息を吹き返すことはないという。多くのケースで心肺停止状態でも医師らが蘇生を続け、救急車で病院に搬送。医師や救急救命士など救助者側の危険性や疲労、コスト負担などが問題点として浮上し、対応が課題となっていた。

http://www.minamialps-net.jp/news_main.php?news_num=921

なるほど。。。
僕は3キャリアの応急救護有資格者です。
その3キャリアに共通してるのは、救急車や医師に引き継ぐまでは継続して蘇生処置を行うことです。
街では119番通報した後、約6分(全国平均)で救急車が現場へ到着します。
仮に渋滞で救急車が現場へ到着したのが、一時間を要した。
この場合でも救助者は心肺蘇生を継続しなければなりません。
例えその場に一人でも…決して自分で判断してはいけない。
引き継ぎにどれだけ時間が掛かっても、我々救助者は医師でないので死亡判断をしてはならないのです。
(これはもう死んでしまっていると判断できるケースは、頭部と身体が離れてしまっている場合等)

それが山という非日常の場所で起こった場合も同じでした。
引き継ぐまで心肺蘇生を続けなければならない事。
目の前に倒れている人がいた場合、普通の倫理観の持ち主なら即座に助けようとします。
例え知らない人でも見過ごすような事はできないはずです。
衝動で『助けよう』と応急手当に掛かると、ある瞬間から義務が発生します。
先に述べた救急車や医師へ引き継ぐまでの蘇生義務が。
このポイントが記事にも書かれている救助者側の安全確保や負担軽減なのです。

応急救護で殆どの方が経験しているのが、免許取得時の応急救護講習だと思います。
あの時人形を心臓マッサージしただけで汗が吹き出たはずです。
その作業を延々山でできますか?
15分持てばいいほうです。
延々とできません…いくら助けたい気持はあっても。
自分にもリスクが発生してしまいます。

これが特に自分の家族や恋人・友達であったら15分なんかでやめられないのが正直な気持ち。
自分が死んででも心肺蘇生を続ける!
という気持になるのが当たり前と思いませんか?

僕が今まで以上に『知らない人でも助けたい、助けなければならない』と強く思ったエピソードがあります。
実は数年前に富士山で心肺停止→低体温症で後に亡くなられた単独の方に声を掛けたことがあります。
状況は敢えて略しますが、もっと強い意思で危険を認識させ、自分のツアーの安全も確保しつつ救助すればよかったと未だに後悔しています。
やろうと思えばできました。

今思えば既に低体温症で意識混濁が始まっていたのか、軽く頷いた感はありましたが、明確な意思表示・返答はありませんでした。
それでも上の小屋、下の小屋まで中間10分の場所だったので、
『あの後どちらかの小屋へ向かっただろうな』という受け渡しの気持ちがあったのは事実です。
結果亡くなられていた事を知った時から自分の倫理観が葛藤し続けています。
以来、多様な状況でも対応できるファーストエイドのスキルを備えなければと本格的に取得しました。

今回の決定のように医師がいない場合での共通基準を設けてもらえた事は革新的です。
上で挙げた“葛藤”を少しでも処理するファクターとなるのは間違いないのですが、
自分でも対応できるかは不安だらけで、結局はどこかで踏ん切りをつけないといけないのか…。
頭でそう決めても、心がすんなり許すわけないですからね…。
ある程度解りやすいように専門用語抜きで書いてみましたが、改めて…難しいです。


一緒に登ってヘラヘラしててもしっかり見てるのでそこそこ安心して下さいね(汗)



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1 件のコメント:

  1. 「第一回12誘導心電図伝送を考える会」
    http://clcard.umin.jp/gate/comingmeeting/
    開催日 2月23日(日)午前10時半から4時
    場所  TKP品川カンファレンスセンタ
    出席者 救急循環器医、消防署、技師、関連者
    主催  12誘導心電図伝送を考える会
    会費  医師など直接関係者 1,000円

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